脳性まひ者 しんやのひとりごと

脳性麻痺による両上下肢機能障害と共に生きる筆者が、折にふれ、浮かぶ思いをつづる。

ある午後のひととき

外は陽がさしていたが、電動車いすで道ばたを行くと、かすかな風さえ冷たくて、身に沁みてくるようだった。 昼近く、近所のヤマザワのスーパーへ出かけて戻ってきた。食事、片づけがすんで、ヘルパーさんが帰り、少し休んでいた。 午後一時になり、玄関のチ…

音楽工房104の生演奏

舞台の上で演奏している人は、音を料理する人で、みんなコックさんの恰好をしている。トランペット、バイオリン、ドラムなどの、 「おいしい音を召しあがれ…」 音楽工房104(とよ)による生演奏を聴いた。仙台フィルハーモニー管弦楽団の団員を中心にした…

どっきり怪現象?!

部屋とキッチンのあいだの戸のガラスが急に鳴りだし、パーンと音が反対側のほうでした。 それは平成二十一年十一月三十日、もう少しで午後二時半になるころだ。 読書に使っていた電気スタンドが首から折れて落ちている。ギョッとした。 そのタイミングで、 …

T春さんの訪問

窓にさす陽の光がいくぶん傾きかけた午後の二時ごろ、ぼくはアパートの部屋にいた。すると、ベランダから呼ぶ声がする。 だれだろう。 四つん這いでいき、窓枠にひじをひっかけて開けてみる。 「あら、T春ちゃん…」 障害者施設にいたときの利用仲間で、何か…

はぐれカラス

数羽のカラスが鳴きながら、長町南のぼくのアパートの空を飛んでいく。 どこでもよく聞かれる、カラスの鳴きごえだ。と思うと、群れからはずれ、かったるそうに鳴くカラスがいる。 スーパーがあり、家々が並ぶ。道路には行き交う車もない、しいんとした時に…

夢とうつつで…

無精ひげを生やし、もじゃもじゃあたまの男の友人(三十半ば)がいる。久しぶりに会った彼は、心もちさっぱりしていた。 ぼくは車いすで、どこかの料理店にいっしょにいた。 飲みますと、ぼくが合図を送り、そのつど彼はストローをさした水割りを口元へ持っ…

学生さんの訪問

割りばしをつけたサンバイザーをかぶり、あたまを動かしながら、パソコンのキーボードを打って文を作る。 運動神経の障害で手指が思ったように動かないぼくは、マウスが扱えないので、トラックボールを使っている。腕をそのボールに乗せ、体のほうを動かし、…

コンサートや芝居が楽しめるレストランでゆっくりと…

心に沁みるピアノの音が、店内に響きわたっている。優しくつつんでくれるようなメロディーは、ショパンのノクターンだ。 弾いているのは、生まれつき右手首から先がない、という方で、左の五本指と、右の手首の先を使って器用に鍵盤をたたいている。ここまで…

仙台市長選挙 祈りの一票

小太りめがねの、四十代後半の男のヘルパーさんについてきてもらいながら、長町南小学校へ電動車いすで投票に行く。 きのう仙台市長選挙だった。 晴れていたのに、出かけるころになって、くもってきた。雷が鳴って、途中で雨が降りだした。 ようやく着くと、…

オカマなんすかぁ?!

役所へ用事があり、近くのザ・モール仙台長町の二階にある紳士服売り場へ寄った。 「この半袖のシャツ、いいなぁ。でも値段がちょっと高すぎだ。またこんどにしよう」 ひとり呟き、買う必要のある夏向きの衣服の目星をつけながら、電動車いすで進んでいた。 …

サンスベリアが、また伸びた?!

きょうは、午後にみえた三十代の小麦色の肌をした男のヘルパーさんが、部屋に入るなり、 「あれ、あの観葉植物の葉っぱ、また伸びたんじゃないですか?」 言われてみると、たしかに、同じ高さだったはずのそばの本棚より、もう二十センチはあたまが出ている…

チョボラ

地下鉄長町南駅である。 エレベーターのボタンへ、柵の向こうから男の子が手を伸ばしていた。小学五、六年生だろうか。 ぼくは、ちらっと見ながら、 「どうしたのかな?」 男の子はタッチすると、そのまま去ろうとしていた。 ぼくは出かける用があり、地下鉄…

賞に選ばれた夢?

「えっ、なに?」 メールをひらいて、とまどった。 なんと、ぼくのブログが、賞に選ばれたというのである。 どこかに応募したおぼえもない。だれかに、うらまれているのかなぁ。きっと、いたずらだ。 けれども、しごとでねたまれるような、切れる男でもない…

いつか わが身…

障害をもつ当事者の集まりが先日あって、ぼくもそれに加わった。障害者やその支援者の現状を、なんとかわかってほしい。そんな思いから、大勢の仲間が集まり、仙台の中心街を、デモ行進した。 「私たち抜きに、私たちのことを、決めるな!」 自立支援法、と…

手作りクッキー

「こんど、障害のあるひと何人かと、学生集めてお菓子作りでもしようかと思うんですけど、きてみませんか?」 S協会に勤めるYさんからメールが届いた。 S協会はボランティアを派遣してもらっていたところだが、彼も学生のころ、その協会のボランティアと…

夜の街で

居酒屋さんを出たのは、夜の八時過ぎだった。 十二月も中ごろになると、ジャンパーを着せてもらっていても、空気の冷たさが身にしみる。 仙台駅周辺の夜は、赤や黄、ブルーの灯りがきらめいている。 きのうはガイドのヘルパーさんについてもらいながら、南町…

心にしみる ギターと歌声

ボラさんに車いすを押してもらいながら、一番町の藤崎デパート前へ向う。 あたりがうす暗くなってきて、空気が冷たい。 雪がちらつきだした。歩行者天国のアーケードへ入ると、ブルーやオレンジ、赤の光が彩っている。 クリスマスツリーが、歩道や店々に飾ら…

月が変わって、もう師走なんだぁ…

パソコンのキーの操作も、ぼくの手指はねらったところへあまりうまく動かないから、割りばしをつけたサンバイザーをかぶり、あたまを動かしながらキーボードのキーを押す。 利用しているいくつかのヘルパー派遣事業所とのやりとりや、いろんなところへの連絡…

みんないいヤツじゃん

ある日、ちょびひげを生やした二十代なかごろの男のヘルパーさんが、微笑を浮かべながらも、何かをとまどっているようすだった。 「じつは、前から気になっていたことがありまして」 「えぇ、なんでしょう」 ぼくはぬけているところがあるから、そのことか。…

味オンチ

ボランティアさんが迎えに来て、アパートを出たのは朝の九時すぎだった。 電動車いすを操作しながら、冷たい風が目に染みて、涙が少し流れてくる。 木枯らしがふいてどうしたと、ニュース番組でアナウンサーが伝えていたが、今年ももう、そんな季節になった…

電話の前でドキドキ

伝えなければならない内容は、FAXで送ったが、 ──電話もしておいたほうがいいかなぁ。 ある保険の期限が切れるので、続けて利用するための手続き案内が、アパートのポストに届いていたのがあった。 この保険料、いまのぼくの状況にはちょっと高いし、これ…

あんなちっちゃい子なのに…

電動車いすを操作しながら、ザ・モール仙台長町のショッピングセンターで品物を見てまわっていると、四つくらいの男の子と目が合った。 こんにちは、と言うと、かるく頭をさげた。脳性まひで、ことばがはっきりしない。けれど、通じたらしい。 品物を選んで…

広瀬川灯ろう流し

ふうっと息をついて見まわすと、ゴザを敷いている家族づれ、浴衣姿の人、カップルが目についた。 暗くなるにつれ、川辺はそれらの人で埋まり、電動車いすでは、前にも後ろへも行けないくらいになっていた。 この日は、広瀬川灯ろう流しがあるので、いっしょ…

う~ん 猫のおしっこが…

電動車いすのカバーをはずそうとしたヘルパーさんが、叫ぶような声をあげ、 「なんだ、ここにたまっている黄色い液体は…。くさいっ!」 オエッ、オエッとむせかえっていた。 出かける準備のときで、それはなんと、猫のおしっこだった。 ニャ~ンという鳴き声…

ポスター

部屋の中にいても、いろいろやっているうちに、疲れがたまってくるものである。そんなときは、布団の上に這い上がり、ふぅとひと息をつく。 部屋を見まわしながら、ふと思った。白っぽい壁ばかりで、なんかさびしいなぁ。 ぼくが障害者の施設を出たのは、き…

猫とボール遊び

部屋の窓をあけてもらい、外を眺めていると、ときどき「ニャオ~ン」と鳴き声がする。 白黒の猫が、じっとこちらを見上げている。こんにちは、と言うと、猫はこちらをじっと見ながら、 「ニャオ~ン」 と鳴いた。 毛並みがきれいだし、人慣れしているから、…

主婦の感覚?

ある夕食時、ヘルパーさんがきいた。 「尾崎さんは、この納豆がすきなんですか?」 ぼくは、そのときどきの気分で、なんとなく選んでいるつもりでいた。 いわれてみるとたしかに、納豆はサンコー食品から出ているものが多い。 あらためて考え、いま気づいた…

そろそろ虫対策を

夜の十一時すぎ、ある女性ヘルパーさんが、身震いしながら入ってきた。玄関のドアを開けたら、クモがスルスルッと降りてきたらしい。 ぼくも、夜中に布団のなかで目が覚めると、クモがぶら下がっていて、ハラハラしたことがある。 天井からスルスルッと降り…

頭よくなあれ

手があまり利かないので、勉強や調べものをするときは、ブックスタンドに資料や本を立て、あごや鼻を使ってページをめくる。 その一連の動作がおっくうになり、や~めた、とときどき投げ出してしまったりする。 いつだったか、夕食のときにテレビをみていた…

恋人型ロボット

言ってほしいことをなんでも言ってくれて、いつもやさしくしてくれる。 そんな恋人ロボットがいたら、やっぱりうれしくなっちゃったりするのかなぁ。 先週の火曜日からはじまった「絶対彼氏」というテレビドラマをみながら、ふと思ったりする。 相武紗季さん…