2008-01-01から1年間の記事一覧
居酒屋さんを出たのは、夜の八時過ぎだった。 十二月も中ごろになると、ジャンパーを着せてもらっていても、空気の冷たさが身にしみる。 仙台駅周辺の夜は、赤や黄、ブルーの灯りがきらめいている。 きのうはガイドのヘルパーさんについてもらいながら、南町…
ボラさんに車いすを押してもらいながら、一番町の藤崎デパート前へ向う。 あたりがうす暗くなってきて、空気が冷たい。 雪がちらつきだした。歩行者天国のアーケードへ入ると、ブルーやオレンジ、赤の光が彩っている。 クリスマスツリーが、歩道や店々に飾ら…
パソコンのキーの操作も、ぼくの手指はねらったところへあまりうまく動かないから、割りばしをつけたサンバイザーをかぶり、あたまを動かしながらキーボードのキーを押す。 利用しているいくつかのヘルパー派遣事業所とのやりとりや、いろんなところへの連絡…
ある日、ちょびひげを生やした二十代なかごろの男のヘルパーさんが、微笑を浮かべながらも、何かをとまどっているようすだった。 「じつは、前から気になっていたことがありまして」 「えぇ、なんでしょう」 ぼくはぬけているところがあるから、そのことか。…
ボランティアさんが迎えに来て、アパートを出たのは朝の九時すぎだった。 電動車いすを操作しながら、冷たい風が目に染みて、涙が少し流れてくる。 木枯らしがふいてどうしたと、ニュース番組でアナウンサーが伝えていたが、今年ももう、そんな季節になった…
伝えなければならない内容は、FAXで送ったが、 ──電話もしておいたほうがいいかなぁ。 ある保険の期限が切れるので、続けて利用するための手続き案内が、アパートのポストに届いていたのがあった。 この保険料、いまのぼくの状況にはちょっと高いし、これ…
電動車いすを操作しながら、ザ・モール仙台長町のショッピングセンターで品物を見てまわっていると、四つくらいの男の子と目が合った。 こんにちは、と言うと、かるく頭をさげた。脳性まひで、ことばがはっきりしない。けれど、通じたらしい。 品物を選んで…
ふうっと息をついて見まわすと、ゴザを敷いている家族づれ、浴衣姿の人、カップルが目についた。 暗くなるにつれ、川辺はそれらの人で埋まり、電動車いすでは、前にも後ろへも行けないくらいになっていた。 この日は、広瀬川灯ろう流しがあるので、いっしょ…
電動車いすのカバーをはずそうとしたヘルパーさんが、叫ぶような声をあげ、 「なんだ、ここにたまっている黄色い液体は…。くさいっ!」 オエッ、オエッとむせかえっていた。 出かける準備のときで、それはなんと、猫のおしっこだった。 ニャ~ンという鳴き声…
部屋の中にいても、いろいろやっているうちに、疲れがたまってくるものである。そんなときは、布団の上に這い上がり、ふぅとひと息をつく。 部屋を見まわしながら、ふと思った。白っぽい壁ばかりで、なんかさびしいなぁ。 ぼくが障害者の施設を出たのは、き…
部屋の窓をあけてもらい、外を眺めていると、ときどき「ニャオ~ン」と鳴き声がする。 白黒の猫が、じっとこちらを見上げている。こんにちは、と言うと、猫はこちらをじっと見ながら、 「ニャオ~ン」 と鳴いた。 毛並みがきれいだし、人慣れしているから、…
ある夕食時、ヘルパーさんがきいた。 「尾崎さんは、この納豆がすきなんですか?」 ぼくは、そのときどきの気分で、なんとなく選んでいるつもりでいた。 いわれてみるとたしかに、納豆はサンコー食品から出ているものが多い。 あらためて考え、いま気づいた…
夜の十一時すぎ、ある女性ヘルパーさんが、身震いしながら入ってきた。玄関のドアを開けたら、クモがスルスルッと降りてきたらしい。 ぼくも、夜中に布団のなかで目が覚めると、クモがぶら下がっていて、ハラハラしたことがある。 天井からスルスルッと降り…
手があまり利かないので、勉強や調べものをするときは、ブックスタンドに資料や本を立て、あごや鼻を使ってページをめくる。 その一連の動作がおっくうになり、や~めた、とときどき投げ出してしまったりする。 いつだったか、夕食のときにテレビをみていた…
言ってほしいことをなんでも言ってくれて、いつもやさしくしてくれる。 そんな恋人ロボットがいたら、やっぱりうれしくなっちゃったりするのかなぁ。 先週の火曜日からはじまった「絶対彼氏」というテレビドラマをみながら、ふと思ったりする。 相武紗季さん…