エレベーターのボタンへ、柵の向こうから男の子が手を伸ばしていた。小学五、六年生だろうか。
ぼくは、ちらっと見ながら、
「どうしたのかな?」
男の子はタッチすると、そのまま去ろうとしていた。
ぼくは出かける用があり、地下鉄
長町南駅から仙台駅のほうへ行こうとしているところだった。
電動車いすを操作し、エレベーターの前で止まる。そのタイミングで、ドアがひらいた。
はっと気づき、
「あの子…」
ふり返りながら去って行く男の子へ、あたまを下げた。
あんな紳士みたいな心づかいは、なかなかできるものではない。まだ小学生なのに…。
温かいものが、じんわりひろがった。