脳性まひ者 しんやのひとりごと

脳性麻痺による両上下肢機能障害と共に生きる筆者が、折にふれ、浮かぶ思いをつづる。

2011-01-01から1年間の記事一覧

湯船につかり…

湯船につかり、ふうっと息をつく。 そばで汗を拭いながら、ひとりで何か呟いている。 「あぁ、ぼくのほとばしる肉汁が、尾崎さんにかかってしまっては…」 「???」 風呂に入る日で、夜の八時にその介助にみえていた。いつも行儀よく正座し、 「きょうの入…

〈結婚を祝ってやろうじゃない会〉

ピアノのゆったりした生演奏が流れ、ツーショットの写真が飾られている。ずんぐりむっくりして、人のよさそうな新郎(三十代)。ショートカットの髪にくりっとした目を細め、ちょっと照れくさげな新婦(三十代)。しあわせそうな雰囲気が、ほおを寄せた笑顔…

秋だから…

湯船につかり、ふうとひと息つく。 夜の八時過ぎである。入浴の介助でアパートにみえていた小太りの三十代の男のヘルパーさんが、 「こんど、またガッキーが出るドラマがあるので、楽しみなんです」 その女優さんがお気に入りのようで、細い目がうれしそうに…

ちいさなたのしみ

しんと静まりかえった夜、部屋で布団に寝ていると、虫の声が外からしてくる。もう秋か、とひとり呟く。 会う人だれもが、 「なんか、ことしは、早かった気がするなぁ」 微笑しながら、ぼくもうなずく。 千年に一度ともいわれる大きな地震があった。長町南(…

アボガドが食べたくなって

割りばしをつけたサンバイザーをかぶって頭を動かし、ひとつひとつキーを押していく。 脳性まひ、という障害で手足が不自由なので、部屋でパソコンに向かうときは、いつもこうして操作する。 少なくなった食材を買いに、近くのヤマザワスーパーへ出かけてき…

小さないたずらのあとに…

夜も静まりかえっていた。アパートの部屋でひとり、すのこベッドにすわって、本に向かっていた。わきの低い棚にブックスタンドがあり、読みたい本は、いつもセットしてある。 こまかい動作ができないぼくは、それでも、手でむりやりめくろうとすると、連動し…

買い出し

小鳥のさえずりが響きわたっている。 電動車いすの後ろをヘルパーさんについてきてもらいながら、住宅地の道のはじっこを進んでいた。 通りかかる家々の庭で、白や黄、紫の草花が、陽を浴びながらゆれている。 電動車いすの後ろのヘルパーさんは、穏やかな三…

東日本大震災でおなかがすいて

割りばしをつけたサンバイザーをかぶり、パソコンに向かう。 あたまを動かしながら、割りばしの先で一つ一つキーを押し、メールの文をつづる。 「○○さんは、だいじょうぶですか。ぼくは、おかげさまで、なんとか無事でした」 〈東日本大震災〉があってから、…

心の元気

ストローをさして座卓においてもらった酎ハイをすすりながら、ひとりでぼやいていたりすることがある。疲れがたまっているな、と感じるとき、あえてそうしてみると、いくらかは気がラクになってくるからだ。 入浴介助のヘルパーさんがみえ、風呂につかり、上…