夜の八時を過ぎていた。湯気が立ち上っていくのをぼんやり眺める。ふうっと息をつく。 体じゅう強い力が入って、手と足がときどき、かってに動く。息苦しくもなる。湯船につかり、こうしていると、運動神経の障害によるその症状も、いくぶんやわらいでくる。…
夜も静まりかえっていた。アパートの部屋でひとり、すのこベッドにすわって、本に向かっていた。わきの低い棚にブックスタンドがあり、読みたい本は、いつもセットしてある。 こまかい動作ができないぼくは、それでも、手でむりやりめくろうとすると、連動し…
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