脳性まひ者 しんやのひとりごと

脳性麻痺による両上下肢機能障害と共に生きる筆者が、折にふれ、浮かぶ思いをつづる。

2010-01-01から1年間の記事一覧

ピアノの調べに癒されて…

甘く澄んだ弦の音が、響きわたっている。いつしかまどろみながら、ぼくはコンサートホールの車いす席で、じっと耳を傾けていた。 目をとじていると、雪をかぶったもみの木の林にレンガの家がぽつんとあらわれる。窓にペチカの灯が揺れる。幼いころ、紙芝居な…

雨女と呼ばれて…

「『わたしんときは、カッパ着たこと、まだないですね、エヘヘ』って、も~、な~に~」 介護者派遣サービスの事務所を出てくるとき、通院時にずっとつづけてついてくれていた今年大卒の女のヘルパーさんに言われてきたらしい。 ほおをふくらまし、明るく笑…

あの子もどこかで…

街路樹の下の歩道を電動車いすで行く。葉ずれの音がして、枯れ葉が舞い散る。 平成二十二年十一月四日は青空が広がり、雲がゆっくり流れていた。 手続きの用があって、長町の銀行へ、ヘルパーさんについてもらって出かけた。 思いのほか早く済んだので、ショ…

優しさに救われて

平成二十二年十月三十日、窓からみえる空は、雲が広がっていた。 ピアノのCDを流しながら、アパートの部屋でひとり、座布団にすわって、パソコンに向かう。 手がうまく使えないので、割りばしをつけたサンバイザーをかぶり、あたまを動かしながら、それで…

イチジクの花…

アパートにみえる客や知人、あるいは出かけた先で、たまに聞かれることがある。 「尾崎さんは、自伝を書こう、というおつもりは、ないんですか」 脳性まひ、という運動神経にかかわる障害があり、ぼくは歩くこともできないし、手もうまく使えない。思いや考…

きびしい冬をのりこえれば…

やわらかな日射しが、ベランダの窓のレースのカーテン越しにさし込んでいる。 朝の訪問のヘルパーさんが八時半で帰ってから、ぼくはひとり部屋で、いつものようにパソコンで用を片づけていた。 銀行の入出明細をネットからパソコンに取り込み、そのデータを…

ある午後のひととき

外は陽がさしていたが、電動車いすで道ばたを行くと、かすかな風さえ冷たくて、身に沁みてくるようだった。 昼近く、近所のヤマザワのスーパーへ出かけて戻ってきた。食事、片づけがすんで、ヘルパーさんが帰り、少し休んでいた。 午後一時になり、玄関のチ…