ちいさな窓のあかり

脳性まひのぼくが、自分を愛するために、箸の先で書きつづる思い

もう友だちです

 料理の得意な人たちが、フライパンや鍋で、なにか作っています。
 オクラのあえもの、豚肉の野菜炒めと、ぼくのいるテーブルに運ばれ、食欲をそそる匂いがただよいました。
 料理を作って食べる、交流会のような催しが名取市の公民館であり、昨日はその仲間に、車いすで加わっていました。
 ぼくは鼻をひくつかせながら、――あぁ、早く食べたいなぁ。けれど、手が利きません。
 通りかかった人が、
「ザッキーも、食べる?」
 ひとりひとりのうでや胸には、ネームシールが貼ってあります。いつもとちがう名で、呼び合う形式でした。
「うん、野菜炒め、食べたい」
 それを箸で口に入れてくれました。ぼくは、おいしいと言葉で言うより、いまは忙しそうなので、にっこり目で合図を送ったほうがいいと思いました。相手の人もにっこりうなずいて、持ち場へいきました。
 実はこの日、いつも介助してくれているヘルパーさんには、少しぼくから離れている形にしてもらっていました。
 ふだん、あまりお話しできるような接点のない職業の人たちもいました。線路の工事、街のカフェ、社会活動の責任者さん、それに今回は、常連さんが友人や知り合いを誘ってきていたようです。
 そういう人たちとも、なんらかの形でも、コミュニケーションをとりたかったからです。心が通えば手振りでも、アイコンタクトでもいいのです。
 コロナが流行ってからというもの、町の人とふれあう機会が少なくなって、なんか、さびしいな、と気づけば部屋の窓から空を眺め、ため息をついたりしています。そんなぼくに、こういう集まりがあるよ、と教えてくれた人がいました。もう二年、いや、三年前になるでしょうか。
 はじめのころは、参加するたび少しドキドキしました。かってに体が動くし、話すにも言葉がもつれてしまいます。脳性まひによるこれらの症状が、気になりました。そばにいた公民館の職員さんに、
「ぼく、料理は作れないし、食べてるばかりなんだけど……」
 ここにいても、いいのかな、と聞いていました。すると、
「うん、オザキさんも、ここにいてくれるだけで、うちら、すごく学んだんだよ。だって覚えてる? 最初会ったとき、私さぁ、オザキさんとこ幼児扱いしてたんだよ。ハッハッハッ、ほんと、思い出すと、笑いがとまらないんだよね」
 そんなふうに言っていただいて、肩の力が抜け、ホッとしたのを覚えています。
「料理も出来たし、楽しく飲もう」
 うん、飲もう飲もう、とぼくもうなずきました。
 帰り際、赤ら顔で「楽しかったよ。またね」と握手してくれたおじさんも、なんだか、もう友だちです……。