音楽工房104の生演奏
舞台の上で演奏している人は、音を料理する人で、みんなコックさんの恰好をしている。トランペット、バイオリン、ドラムなどの、
「おいしい音を召しあがれ…」
知り合いの人が実行委員になっていて、誘ってくれた。
夕方六時半から開演で、場所は太白区文化センター楽楽楽ホール二階である。ぼくのアパートから人が歩いて二十分ぐらいのところだ。
玄関を出ると、ヘルパーさんが目をまるくした。
「この寒さ、半端じゃないっすねぇ!」
ひょろりとした若い男のヘルパーさんが、外出の介助についてくれていた。
平成二十一年十二月二十一日、考えてみると、あと十日で今年も終わりなのだ。
部屋を出る前にみていたテレビの天気予報で、仙台市の気温は、零度といっていた。夕方五時半近くにアパートの玄関を出たが、外はすっかり暗くなり、風が吹くと、冷たい空気が耳にあたって少しいたかった。
電動車いすの後をヘルパーさんについてきてもらい、二十分ぐらいで着いたが、ほんとに寒い夜だった。
会場へ入るとホールのいちばん前の席に案内され、そこに電動車いすをとめて演奏を聴き入っていた。
プロが奏でる生の楽器のリズムと音色が心地よい。
コントもあった。ドラムの人がばちを落として、演奏家がみんなこけて、どっと笑い声が響く。必殺仕事人の曲を吹きながら、客席の暗いところから、トランペットの人が出てきて、歓声が上がった。
客席の多くは、幼い子や小学生のいる家族づれだったが、ぼくもいっしょにその雰囲気を楽しんだ。
「特別な楽器がなくても、身のまわりにあるもので、音が出ます」
ジュースのびんや、ペットボトルを吹いて鳴らすことはよくありそうだが、水道の蛇口に使うホースを吹いて、しっかりした音が出てくるのにはびっくりだった。ダンボール箱とひもと濡れたフキンの組み合わせから出る音もある。違った大きさのフライパンを並べれば、ドレミファの音になる。次々にくりひろげられる演奏者の実演に、会場の子どもたちも、興味津々だ。
いつしかぼくの心も解き放たれ、子どもに返った。
遊び心があれば、思わぬものから、思わぬ音が出る。
そうか……。
このメッセージは、少しくたびれ気味だったぼくへの、クリスマスプレゼントだ、と思った…。