脳性まひ者 しんやのひとりごと

脳性麻痺による両上下肢機能障害と共に生きる筆者が、折にふれ、浮かぶ思いをつづる。

恋人型ロボット

 言ってほしいことをなんでも言ってくれて、いつもやさしくしてくれる。
 そんな恋人ロボットがいたら、やっぱりうれしくなっちゃったりするのかなぁ。
 先週の火曜日からはじまった「絶対彼氏」というテレビドラマをみながら、ふと思ったりする。
 相武紗季さん扮する主人公の女の子は、いいなぁと思う人がいても、どうやら告白してはいつも振られてばかりいるらしい感じの子である。お人形でもいいからさびしい気持ちを癒されたい。
 理想のすがたかたちにつくります、という販売員とたまたま会い、これはと思って飛びついたのかな。あんまりくわしくはわからないけれど、たぶんそんな感じなんだろう。
 届いてみると、見た目は生身の人間とほとんど変わらない。イケメン俳優の速水もこみちさんが、そのロボット役になっている。
 もしぼくだったら、どんなすがたかたちにしてもらうだろうな。そういえば、
「尾崎さんは、だれかいいなあと思うひと、いないんですか?」
 とくに女性のヘルパーさんに聞かれたりすることもあるが、う~んとうなってしまう。そういう話しはあんまりしたことがなかったなぁ。そういう部分の気持ちはいつのまにか忘れてしまっていたような気がする。
「けれど、だいぶむかしの話なんだけど、十五、六のころかなぁ。夜も眠れなくなるくらい気になってた女の子がいたんだぁ。ちょっとほっぺがふっくらして、目がコロッとしててね」
「いまの女優さんでいうと、どんな感じ子?」
「う~ん、いまだとね…。そうだぁ。あの『14才の母』とかに出てた子…」
「もしかして、志田未来ちゃん?」
「そうそう。あの子をもっと田舎っぽくしたような」
「じゃあ、かわいかったんだねえ」
「うん」
 そうだ。ぼくのロボットは、あの子にしよう。
 若かりしころの片思いでも、思い出してみると、こころが癒され、疲れが吹っ飛んでしまう。
 いつの夜だったか、ぼくはこんな空想にふけっていた。
 けれどもな、もう四十の、しかも冴えないオッさんになってしまったし、こんなかわいい女の子といっしょに遊園地やディズニーランドへ行くなんて、こんなんじゃぁ絵にもならねえよな。
 どこかに魔法使いのヘルパーさんはいないのか。
 一日でいいから、ぼくをジャニーズ系のかっこいい男の子にしてくれ!
 すると、そのとき玄関のチャイムが鳴った。
 ひげが生えかけで、髪はもじゃもじゃ、デッカイからだをした男の人が、にこにこしながらあらわれた。
「ジャニーズ系のヘルパーさんって、いま、わたしのこと呼びましたよね。前からそう思ってたんでしょ、尾崎さん!」
 いつのまにか寝る時間になっていて、就寝介助に来たのだ。
「尾崎さん、ぼく、木村拓哉に、似てますよね」
「そ、そ、そうですね。はははは」
 なんだかそう言ってうれしそうにしているようすをみていると、こちらまで、にこにこ顔になってくる。
 おもてむきはちがってみえても、みんなそれぞれに、なんらかの寂しさをかかえているのかもしれないなぁ。もうロボットでもいい。この淋しいを心を受けとめてくれるなら…。