心にしみる ギターと歌声
ボラさんに車いすを押してもらいながら、一番町の藤崎デパート前へ向う。
あたりがうす暗くなってきて、空気が冷たい。
雪がちらつきだした。歩行者天国のアーケードへ入ると、ブルーやオレンジ、赤の光が彩っている。
クリスマスツリーが、歩道や店々に飾られていた。
そうか…、もうすぐ、クリスマスなんだぁ。
そこで『エル・クルー』のコンサートがあり、きのうはボラさんと聴きに出かけていたのだ。
ぼくは車いすで、よくみえる特等席に連れてきてもらっていた。
冷たい風の中、やさしいギターのメロディーが流れ、きれいな声が響きわたる。
歌っている女のひとの、白いドレスのすそが、ひるがえっている。
吹いてくる風は冷たかったが、目を閉じて聴いていると、その歌声は、ぼくの心に灯をともしてくれた。
脳性まひ、という障害がぼくにはあり、体と言葉が不自由である。
何もしていないときでも、つよい力が入って、自分で抜くこともうまくできない。
だからときどき布団に横になり、休むようにしている。そんなとき、ゆっくりしたやさしい感じの曲をかけると、よりリラックスできる。
だからときどき布団に横になり、休むようにしている。そんなとき、ゆっくりしたやさしい感じの曲をかけると、よりリラックスできる。
ふだん、パソコンが調子わるくなったとき、いつもみてもらっているボラさんと、ときどきメールのやりとりをしていて、その話になった。
「仙台にも、きれいな歌を聴かせてくれる歌い手さん、いますよ」
と教えられ、きのう、はじめて聴きにいった。
たくさんのカップルに囲まれたぼくは、
──もし、生まれ変わる、ということがあるとしたら、ぼくもこのカップルのうちのひとつになって、こんなすてきな歌を聴いていたいなぁ。
いつしかロマンチックな気分に、ひとり、ひたっていた…。