脳性まひ者 しんやのひとりごと

脳性麻痺による両上下肢機能障害と共に生きる筆者が、折にふれ、浮かぶ思いをつづる。

どっきり怪現象?!

 部屋とキッチンのあいだの戸のガラスが急に鳴りだし、パーンと音が反対側のほうでした。
 それは平成二十一年十一月三十日、もう少しで午後二時半になるころだ。 
 読書に使っていた電気スタンドが首から折れて落ちている。ギョッとした。
 そのタイミングで、
「ドンドン」
 玄関の戸をノックする音がし、色の黒い三十代の男の人が、ぎょろっとした目でまばたきしながらあらわれた。間の抜けた声で、
「こんにちは~」
 ヘルパーさんだった。
 いま起こったできごとにぼくは茫然としたが、電気スタンドをよく見ると、もう使えない状態になっている。彼に処分を頼んだ。
「これって、いつ壊れたんですか」
 と聞かれ、いまです、と答えると、彼はさらにくわしく聞いてきた。聞かれたから、起こった順番に説明していく。
「えっ…。わたし、なんか、しょってきましたか?」
 彼のがっしりした体が、ちいさくなってふるえていた。
 映画のなかによく出てきそうなシーンになりえるのかもしれない。疲れていたりすると、ぼくだって、幻のようなものをみることは、たまにある。
 偶然が重なったためなのか、それとも霊なのか。人と話しはするけれど、だれもいなければ、何も考えないし、思わない。
 壊れた電気スタンドだって、障害者の施設にいたときの状況に合わせて買ったものだ。いまはそこを出て、アパートで暮らすようになり、本を読むときのセッティングも変わった。この電気スタンドでは使いづらくなっていた。そのうちいまの状況に合うものにかえようと思っていたので、壊れてちょうどよかったくらいだ。
 といって、午後になって、少しくたびれていたぼくのあたまには、一瞬ひやっときたのもたしかだ。霊がどうのこうのではなく、いきなりだと、なんでも、驚くものだろう。おかげで眠気がなくなり、パソコンの作業がはかどった。