脳性まひ者 しんやのひとりごと

脳性麻痺による両上下肢機能障害と共に生きる筆者が、折にふれ、浮かぶ思いをつづる。

共に生きる社会への願いを込めて

マスクごし

電動車いすに乗せてもらい、うちの近くの公園をひとりで散策していたが、かえって息苦しくてくたびれるから、しばらくやめていた。 うちを出るとき、マスクをしなければならないからである。 伊達メガネで押さえる方法は思いついた。それでもマスクは動いて…

障害者である前に

電動車いすで進む路面に、建物の影がくっきり浮かびあがる。 雲間からの陽の光が並木の葉に映え、目を細めた。 平成二十八年七月二十九日、長町南(仙台市)は朝のうち雲が広がっていたが、徐々に陽がさしてきた。 昼前、自宅玄関から外の電動車いすに乗せても…

車いす者の気持ち

車いすを押してもらい、街のイベントなどへ出かけると、見ず知らずの人が声をかけてくださる。 うれしいお心づかいをいただいたときは励みになるが、とたんに気が重くなることも多い。たとえば夜などデッカい声で、ヘルパーさんのほうだけに、 「この車いす…

〈ATARU〉くん

〈ATARU〉くんとは、スマップの中居正広さんがドラマで扮していたサヴァン症候群の青年である。 十年ほど前だったか、NHKの特集番組で、この障害のある海外の人たちを取材していたのをみたことがある。左脳が働かず、そのぶん右脳が発達した人や、そ…

優しさに救われて

平成二十二年十月三十日、窓からみえる空は、雲が広がっていた。 ピアノのCDを流しながら、アパートの部屋でひとり、座布団にすわって、パソコンに向かう。 手がうまく使えないので、割りばしをつけたサンバイザーをかぶり、あたまを動かしながら、それで…

チョボラ

地下鉄長町南駅である。 エレベーターのボタンへ、柵の向こうから男の子が手を伸ばしていた。小学五、六年生だろうか。 ぼくは、ちらっと見ながら、 「どうしたのかな?」 男の子はタッチすると、そのまま去ろうとしていた。 ぼくは出かける用があり、地下鉄…

電話の前でドキドキ

伝えなければならない内容は、FAXで送ったが、 ──電話もしておいたほうがいいかなぁ。 ある保険の期限が切れるので、続けて利用するための手続き案内が、アパートのポストに届いていたのがあった。 この保険料、いまのぼくの状況にはちょっと高いし、これ…

あんなちっちゃい子なのに…

電動車いすを操作しながら、ザ・モール仙台長町のショッピングセンターで品物を見てまわっていると、四つくらいの男の子と目が合った。 こんにちは、と言うと、かるく頭をさげた。脳性まひで、ことばがはっきりしない。けれど、通じたらしい。 品物を選んで…