脳性まひ者 しんやのひとりごと

脳性麻痺による両上下肢機能障害と共に生きる筆者が、折にふれ、浮かぶ思いをつづる。

日記・コラム・つぶやき

イチジクの花…

アパートにみえる客や知人、あるいは出かけた先で、たまに聞かれることがある。 「尾崎さんは、自伝を書こう、というおつもりは、ないんですか」 脳性まひ、という運動神経にかかわる障害があり、ぼくは歩くこともできないし、手もうまく使えない。思いや考…

ある午後のひととき

外は陽がさしていたが、電動車いすで道ばたを行くと、かすかな風さえ冷たくて、身に沁みてくるようだった。 昼近く、近所のヤマザワのスーパーへ出かけて戻ってきた。食事、片づけがすんで、ヘルパーさんが帰り、少し休んでいた。 午後一時になり、玄関のチ…

どっきり怪現象?!

部屋とキッチンのあいだの戸のガラスが急に鳴りだし、パーンと音が反対側のほうでした。 それは平成二十一年十一月三十日、もう少しで午後二時半になるころだ。 読書に使っていた電気スタンドが首から折れて落ちている。ギョッとした。 そのタイミングで、 …

T春さんの訪問

窓にさす陽の光がいくぶん傾きかけた午後の二時ごろ、ぼくはアパートの部屋にいた。すると、ベランダから呼ぶ声がする。 だれだろう。 四つん這いでいき、窓枠にひじをひっかけて開けてみる。 「あら、T春ちゃん…」 障害者施設にいたときの利用仲間で、何か…

夢とうつつで…

無精ひげを生やし、もじゃもじゃあたまの男の友人(三十半ば)がいる。久しぶりに会った彼は、心もちさっぱりしていた。 ぼくは車いすで、どこかの料理店にいっしょにいた。 飲みますと、ぼくが合図を送り、そのつど彼はストローをさした水割りを口元へ持っ…

学生さんの訪問

割りばしをつけたサンバイザーをかぶり、あたまを動かしながら、パソコンのキーボードを打って文を作る。 運動神経の障害で手指が思ったように動かないぼくは、マウスが扱えないので、トラックボールを使っている。腕をそのボールに乗せ、体のほうを動かし、…

サンスベリアが、また伸びた?!

きょうは、午後にみえた三十代の小麦色の肌をした男のヘルパーさんが、部屋に入るなり、 「あれ、あの観葉植物の葉っぱ、また伸びたんじゃないですか?」 言われてみると、たしかに、同じ高さだったはずのそばの本棚より、もう二十センチはあたまが出ている…

いつか わが身…

障害をもつ当事者の集まりが先日あって、ぼくもそれに加わった。障害者やその支援者の現状を、なんとかわかってほしい。そんな思いから、大勢の仲間が集まり、仙台の中心街を、デモ行進した。 「私たち抜きに、私たちのことを、決めるな!」 自立支援法、と…

手作りクッキー

「こんど、障害のあるひと何人かと、学生集めてお菓子作りでもしようかと思うんですけど、きてみませんか?」 S協会に勤めるYさんからメールが届いた。 S協会はボランティアを派遣してもらっていたところだが、彼も学生のころ、その協会のボランティアと…

夜の街で

居酒屋さんを出たのは、夜の八時過ぎだった。 十二月も中ごろになると、ジャンパーを着せてもらっていても、空気の冷たさが身にしみる。 仙台駅周辺の夜は、赤や黄、ブルーの灯りがきらめいている。 きのうはガイドのヘルパーさんについてもらいながら、南町…

月が変わって、もう師走なんだぁ…

パソコンのキーの操作も、ぼくの手指はねらったところへあまりうまく動かないから、割りばしをつけたサンバイザーをかぶり、あたまを動かしながらキーボードのキーを押す。 利用しているいくつかのヘルパー派遣事業所とのやりとりや、いろんなところへの連絡…

味オンチ

ボランティアさんが迎えに来て、アパートを出たのは朝の九時すぎだった。 電動車いすを操作しながら、冷たい風が目に染みて、涙が少し流れてくる。 木枯らしがふいてどうしたと、ニュース番組でアナウンサーが伝えていたが、今年ももう、そんな季節になった…

広瀬川灯ろう流し

ふうっと息をついて見まわすと、ゴザを敷いている家族づれ、浴衣姿の人、カップルが目についた。 暗くなるにつれ、川辺はそれらの人で埋まり、電動車いすでは、前にも後ろへも行けないくらいになっていた。 この日は、広瀬川灯ろう流しがあるので、いっしょ…

う~ん 猫のおしっこが…

電動車いすのカバーをはずそうとしたヘルパーさんが、叫ぶような声をあげ、 「なんだ、ここにたまっている黄色い液体は…。くさいっ!」 オエッ、オエッとむせかえっていた。 出かける準備のときで、それはなんと、猫のおしっこだった。 ニャ~ンという鳴き声…

猫とボール遊び

部屋の窓をあけてもらい、外を眺めていると、ときどき「ニャオ~ン」と鳴き声がする。 白黒の猫が、じっとこちらを見上げている。こんにちは、と言うと、猫はこちらをじっと見ながら、 「ニャオ~ン」 と鳴いた。 毛並みがきれいだし、人慣れしているから、…

主婦の感覚?

ある夕食時、ヘルパーさんがきいた。 「尾崎さんは、この納豆がすきなんですか?」 ぼくは、そのときどきの気分で、なんとなく選んでいるつもりでいた。 いわれてみるとたしかに、納豆はサンコー食品から出ているものが多い。 あらためて考え、いま気づいた…

そろそろ虫対策を

夜の十一時すぎ、ある女性ヘルパーさんが、身震いしながら入ってきた。玄関のドアを開けたら、クモがスルスルッと降りてきたらしい。 ぼくも、夜中に布団のなかで目が覚めると、クモがぶら下がっていて、ハラハラしたことがある。 天井からスルスルッと降り…