街路樹のおばさん
電動車いすで歩道を行く。
パリッ、パリ、と落ち葉を踏む音に、街路樹を仰いだ。ずっとつづいていた緑が、赤や黄、茶に染まっている。なんとなく、パーマをかけたおばさんが、道を行き交う人にはっぱをかけているようにもみえる。
樹木や植物にも感情の変化がある、という実験結果があるらしい。だとしたら、いまのぼくは、どう思われてるんだろう。どっちつかずの、ただの意気地なし…。そうかもしれない。だれにでもやってくるジレンマに、すくんでいただけだ。
日陰にはいると、風の冷たさがいくぶんほおを刺すようになった。十一月十日、暦の上ではもう、立冬を過ぎている。
行き交う車の排気ガスを浴びながら、街路樹は定められた場で、夏の暑さ、雨風のなかもふんばってたえてきたのだ。
――進むからには覚悟せんと、避けて通れんのがあるんや。すくんだら、あかんで…。
なぜ関西弁なのか。あたりをみた。それらしき人はない。
首をかしげる。髪を染めた街路樹のおばさんが、心なしかぼくをみながら、笑っている…。