脳性まひ者 しんやのひとりごと

脳性麻痺による両上下肢機能障害と共に生きる筆者が、折にふれ、浮かぶ思いをつづる。

生演奏を聴きながら…

 指の動きが素早く、息をのんだ。
 仙台を中心に活躍されているギタリスト、Tacchyさんの演奏の高度なテクニックが、車いすでいた席からよくみえた。
「こんど、生の音楽、聴きに行きませんか」
 PCのハード面の調子がわるいとき、助けていただいている五十代の男のボラさんがいる。音楽にくわしく、息子さんもバンドをしている話を聞かせてくださったことがある。
「つかれてない?…」
 気分転換になるから、と誘ってくださった。出かけたのは、きのう夕方近くだった。
 遊楽庵びすた~り、というレストランが長町(仙台市)にある。料理だけでなく、ジャズ、フォーク、合唱といろんなジャンルの生演奏が、ときどきたのしめるところで、きのうも催しがあった。
「そろそろ夕食にする…」
 ビールのグラスにストローをさしてもらい、ちびりちびり、すすっていた。いくぶん酔いが回ってくると、脳性まひによる筋緊張が和らぐ。だいぶラクになっていた。にっこりぼくはうなずいた。そのころはたしか三人か、四人のグループで、南米系の演奏が流れた。聴いたり、みたりするほうへ、よりいっそう集中でき、舌の動きもいくぶんなめらかになる。話すのが楽になってくると、ボラさんへ、
「南米の音楽って、元気な曲、多いですよね」
「そうね。けどその中に、なんとなくもの悲しい雰囲気があるような…」
 悲しい歴史が関係しているんじゃないか、とそのわけを教えてくださり、あらためて聴き入って、うなずいた。
 疲れた心を癒やしてくれたのは、いつも音楽だった。それは共通なのかもしれない。
 ギタリストのTacchyさんのCDを、アパートの部屋でさっそく流してみた。軽快な響きが心地よく、そのリズムに、体をゆらす…。