脳性まひ者 しんやのひとりごと

脳性麻痺による両上下肢機能障害と共に生きる筆者が、折にふれ、浮かぶ思いをつづる。

クモから見つめられ

 二センチほどのクモが、机の上を移動していた。
 ふと顔を近づけ、観察する。十センチほど進んだところでクモは、その気配を察知したようにピタリととまる。首だけまわし、顔をあげ、二つの目で、ぼくの目をじっと見つめる。ギョッとした。
 目を少しそらすと、クモはまた前を向いて進む。ふたたび観察しはじめると、とまって、首だけまわし、こちらの目をじっと見返す。何か言いたげだ。人の顔や目が、わかるのか。
 衝撃が大きかったのだろう。その晩、船のような乗り物の中でたくさんのクモに囲まれ、どこかへいく夢をみた。こわいようだけれど、夢の中では心が通じ合っていた。だれかに会わせてくれるという。が、どこへ連れて行かれ、だれと会ったのか、そこだけ覚えていない。
 なんとも妙な気分である…。