脳性まひ者 しんやのひとりごと

脳性麻痺による両上下肢機能障害と共に生きる筆者が、折にふれ、浮かぶ思いをつづる。

障害者である前に

 電動車いすで進む路面に、建物の影がくっきり浮かびあがる。
 雲間からの陽の光が並木の葉に映え、目を細めた。
 平成二十八年七月二十九日、長町南(仙台市)は朝のうち雲が広がっていたが、徐々に陽がさしてきた。
 昼前、自宅玄関から外の電動車いすに乗せてもらった。近所での用足しである。
 銀行の入り口へ進んでいる途中で、
「こんにちは」
 と小さな声がした。
 コンクリートの壁を背にしている男の子がいて、目が合った。小学三、四年生だろうか。建物の中で用を済ませているお父さんか、お母さんを待っているところなのかもしれない。
 その子へにっこりうなづき、あいさつをして、入り口へ進んだ。手足が不自然に曲がり、かってに動くのは、運動神経に傷があるためである。舌がもつれてしまい、ことばもはっきりしないけれど、びっくりしなかったろうか。あいさつしてもらえて、うれしかった。この気持ちだけでも、あの子に届いていたら、いいな……。気が滅入ることがあったけれど、勇気をもらった。
 電動車いすに乗っていて、背中がじとじとしてきた。
 スーパーへ寄った。足りない食材があったからである。
 入り口を中へ進む。冷房が効いていて、
「ふ~、涼しい。」
 店員さんが笑顔で、
「いらっしゃいませ」
 暑いですね、というように声をかけてくださり、ほっとする思いがした。
 生きていればだれだって、心ない言葉や態度に、傷つくときもある。理不尽な扱いだって受けるし、納得のいかない思いだって、たくさんするだろう。障害のあるなしではない。
 みんなだれかに支えられ、だれかを支えていると気づく。その一員としての誇りを、ぼくも忘れてはなるまい。