広場の木陰にて
区役所へ、用事がありました。
電動車いすで自宅から、10分もかかりません。
午後の窓口受け付けは、1時からだったと思いました。それまでひまだったんで、役所のそばの広場の木陰で休んでいました。
葉擦れの音がしていました。風に吹かれているうち心地よくなり、ぼうっとしてしまいました。
とぼとぼ歩いてくるちいさいのは、1羽のハトぽっぽさんでした。電動車いすのそばまで来て、首を左右にかしげながら見上げています。
「ん?」
そうか、エサがほしいのか。あいにく、ないんだよ。
ぼくはつぶやいていました。ハトぽっぽさんは、向きをくるりと変え、とぼとぼ歩いて行ってしまいました。
ことばが、わかったのか。それとも、思いが伝わるのか。
まさかな。その想像に苦笑いしながら、ハトぽっぽさんの背中を見送りました。しかしずいぶんと人なれしてるなぁ、と妙な気分になりました。
電動車いすにつけた時計をみると、もう役所の午後の受けつけ開始時間です。ぼくも建物入り口へと向かいました。