障がい者長崎打楽団〈瑞宝太鼓〉
闇と静寂を、和太鼓がうち破った。
ばちをふる男たちの二の腕がたくましく、スポットライトでステージ上に浮かぶ乱舞は気迫がある。
二列目の席でみていたぼくは、おなかに響いてくる太鼓の音に、
――おぉぉ~。
強く訴えかけてくる力のようなものはしかし、生の演奏だから、というだけではあるまい。団のメンバーは、みんな障害を抱えている。生きてきた道は、けっして楽なことばかりではなかったはずだ。太鼓と出会い、表現手段とした。練習の積み重ねの日々、そして人生への想いがこもっているからだろう。
ぼくが障害者施設から出てアパート暮らしに移ったときパソコンなどでお世話いただいた白髪まじりの男のボラさんと、
「車いすで生演奏きけるライブハウスって、なかなかないんだよね…。防音設備上、ビルの地下とか多いんだけど、ほとんどエレベーターついてないし」
そんな話をメールでやりとりしていた。
と教えてもらった。
コンサートのなかばに、休憩時間が十五分あった。のどが渇いたので水分補給にホールの外へ出た。
「おからだ、疲れてませんか?」
「わだしですか。いえ、ぜんぜんだいじょうぶですよ。いや~、太鼓の演奏、すごいですよね。たのしいです」
ヘルパーさんに聞いて、それならよかったとホッとし、コーヒーをストローですする。
太鼓の演舞の後半が始まった。
小さな金属製の楽器を両手に持ち、体をくるくるまわして進みながら打ち鳴らす。リズムをとって笛を吹く。
演奏は、もう何曲目だろうか。ばちで太鼓を打つうでも疲れているはずだ。それでも完成度の高い演舞に驚く。心も晴れやかになるのは、演者に楽しげな笑顔があるからだろうか。ファンは、国内だけではないという。
感動と勇気をありがとう。がんばれ!