脳性まひ者 しんやのひとりごと

脳性麻痺による両上下肢機能障害と共に生きる筆者が、折にふれ、浮かぶ思いをつづる。

耳元でささやく声に

 自宅でふとんに寝ていると、左の耳元で、女の人のささやく声がして、
しんやしんや…」
 はっと目が覚めました。
 時計をみると、六時四五分、あと十五分で起床時間です。部屋にはまだ、ぼくしかいません。
 夏になると、〈ほんとにあった怖い話〉というオムニバスのスペシャルドラマをやっていたりしますが、夜、ひとりしかいない静かな部屋でぼんやり眺めながら、つくりもんだな、と思ったりしています。
 今朝の耳元でささやく声も、外のカラスの鳴き声が、そいうふうに聞こえたんだろうな、と思いました。
 かりにお化けだったとしても、それはそれでぼくは平気なのです。
 お金のからんだりする人や団体のいうことは信用しません。
 が、辛いとき、見えないところで支えてくれていたのかもしれないな、とあとからふりかえって、感じることはあります。
 数年前、とてもつらかったときがありました。
 これまで頑張ってきたことは、なんだったんだろう、と、気が滅入っていたのです。
 まったく別々の人から、
「反省なんて、なんにもしなくていいんです。あたりまえにしていても、災難はあるものです」
 それだけいわれておりました。
 朝目覚めてテレビをつけた瞬間、
「これまでやってきたことに、自信を持て!」
 という第一声が、タイミングよく流れてきたりということが多かった。美輪明宏さんが黄色い髪で出てきて、だいじょうぶよ、だいじょうぶだから、と笑みをたたえ、肩をなでてくれる夢もみました。多くは語らず、これからどうしたらいいか、ということは、ヒントもなにもありません。ただ、そういうことは落ち込んでいた時期にかぎってです。
 テレビなどの記憶のいたずらや常識だけでは割り切れないことがなんとなく、あるな、というような気もしています。
 みえないところからも支えられているような気がしながら、ぼくは生きています。