脳性まひ者 しんやのひとりごと

脳性麻痺による両上下肢機能障害と共に生きる筆者が、折にふれ、浮かぶ思いをつづる。

あの黄の花は

 長町南の大通りの若緑の並木の葉が、いつのまにか濃くなっていた。店の建ち並ぶ歩道を、電動車いすで行く。
 向かいからの風がときおり強く吹き、あわてて下を向いて帽子が飛ばされるのを防ぐ。
 ほかの県から来たひとは、仙台は風が強いですね、という。冬が寒く感じるのはそのせいもあるかもしれない。緑が濃くなるいまごろの時期、特に暑い日は、その強い風も、かえって心地よい。
 平成二十九年六月九日、昼過ぎに電動車いすに移乗してもらい、しばし長町南(仙台市)の自宅から散策へ出た。
 六月ももう半ばになる。梅雨入りすれば、明けても今度はギラギラした陽の光にやかれる季節になり、ひとりでの散策はとうぶんできなくなると思ったからである。
 先日ララガーデン長町のショッピングモールへ入ったときである。車椅子用のエレベーターのボタンをげんこつの角で押そうとするが、なかなかあたらない。うでを伸ばして動かそうとすると、あさってのほうへいってしまう。脳性まひによる不随意運動といって、自分の意志と関係なく動いたり、動かなかったりする症状である。調子のいいときは、すんなりボタンが押せるのだけれど、やれやれ、まいったな、とため息をついていたところ、
「わたしがボタン、押すんで、こちらにのりませんか」
 ちいさい子を抱いた若いお母さんが声をかけてくださり、高い位置にボタンのあるほうのエレベーターに乗った。
 そして三階で下ろしてもらい、礼をいってわかれ、料理店などみてまわった。隣の同じショッピングモールの建物、ザ・モール仙台長町の家電コーナーへも行った。32型ぐらいでパソコンのモニターにもなるテレビがあればみてみたかったが、品数がなかった。大きな家電店が近くにあればいいのにな、と思う。
 建物を出ると、その垣根の葉に埋まって黄の花が、ぽつり、ぽつり、咲き残っていた。花の大きさは三、四センチで、おしべが輪のかたちになってめしべを囲んでいる。
 いつも気になっているが、春の終わりから初夏にかけ、毎年あの垣根に無数に咲く黄の花の名は、なんというのだろう……。